「機械工学専攻の院試ではどんな参考書を使えばいいの?」
今回はこのような悩みを抱える方に向けて記事を作成しました。
大学の専門科目は高校以上に、「参考書の分かりやすさ」が勉強の効率に大きく影響します。
私自身、大学院入試対策やテスト対策をするにあたって、数多くの参考書を使ってきました。
その中で、
「この本の解説は式の羅列ばかりで参考にならないな。」
「演習問題の解説が簡素すぎて理解出来ない!」
など、参考書によって長所・短所があったため、今回は私が使用してきた参考書の中で良かったものを紹介していきます。
機械工学系の院試の出題範囲・形式
大学院によって出題範囲や形式は異なりますが、一般的に以下の科目が出題されます。
- 機械力学(+振動工学)
- 材料力学
- 熱力学(+伝熱工学)
- 流体力学
- 制御工学
大学院によっては、電磁気学や統計力学など上記以外の科目が出題される場合もありますが、基本的には、4力学と制御工学が範囲になることが多いです。
機械工学系の院試で役立つ教科書・参考書
機械力学 – 考える力学(レベル:初学者向け)
この参考書は、高校から大学への橋渡しの参考書として非常に適しています。
力学における微分・積分やベクトル解析の考え方が非常にわかりやすく書かれており、数学で頭を悩ます時間を減らすことで本命の力学を効率的に学習できます。
また、公式の導出に関して、式変形が丁寧であり、語りかけるような文章であるため、初学者にも理解しやすいです。
内容に関しては、全部で13章構成となっており、
- 運動方程式の立て方
- エネルギー保存則
- 運動量保存則
- 質点・剛体の並進運動・回転運動
- 解析力学の初歩的な考え方
など、力学を習得する上で欠かせない内容が網羅的に書かれています。
解析力学に関しては、内容をしっかり学習したい方にとっては不十分かもしれませんが、古典力学から解析力学を学ぶにあたっては、うってつけの参考書だと思います。
練習問題も各章に8問程度あり、全て解説がついているので、独学しやすいこともポイントです。
初学者の方向けの参考書として、マセマシリーズがありますが、解説のわかりやすさやボリュームを考えると本書を使用することをおすすめします。
こんな方におすすめ
- 大学の力学を1から網羅的に学びたい
- 力学でどのように数学を用いるかを学びたい
機械力学 – 機械力学(レベル:中級者向け)
「考える力学」で力学基礎を学んだあと、院試レベルの問題を解く前におすすめしたい参考書が森北出版の「機械力学」です。
この参考書は9章構成で、
- 座標の考え方質点系
- 剛体の力学
- 解析力学の基礎
- 1自由度系の振動
- 回転機械の力学
などが含まれています。
この参考書には演習問題が章末にあるだけでなく、各章の途中に例題が多く書かれているので、学んだ内容をすぐにアウトプットしやすい点がおすすめポイントです。
また、「考える力学」と異なり、解析力学の基礎や振動工学の1自由度系の振動、回転機械の力学が掲載されているので、振動工学や解析力学を学ぶ一歩前の参考書として利用することをおすすめします。
時間がない方は、「考える力学」を終えたあと、院試の過去問を解いていて全然理解できないと感じた場合に使用するのが良いと思います。
こんな方におすすめ
- 問題を解きながら機械力学を学びたい
- 振動工学や解析力学の基礎、回転機械の力学を学びたい
機械力学(振動工学) – 振動工学の基礎 新装版(レベル:初学者向け)
この参考書は、機械力学を学ぶ上で欠かせない「振動工学」がわかりやすく解説されています。
機械力学の院試の特徴として、運動方程式を導いたあと、固有振動数や固有モードを求めるパターンの問題が多いため、振動工学を学ぶ必要があります。
この参考書は、11章構成であり、
- 1自由度系の振動や2自由度系の振動
- 連続体の振動
- 自励振動や非線形振動の基礎
などが含まれており、振動工学を網羅的に学べます。
演習問題が章末にあるだけでなく、各章の途中に例題が多く書かれているので、学んだ内容をすぐに復習できます。
注意点として、振動計測やデータ処理、実験モード解析など院試の内容以上のことも含まれているので、院試の出題範囲を見て必要な内容だけ勉強しましょう。
こんな方におすすめ
- 振動工学を1から網羅的に学びたい
- 問題を解きながら振動工学を学びたい
また、有名な参考書として、「振動学(JSMEシリーズ)」があります。
各章を異なる先生が分担して書かれており、用語や記号が章によって異なっているので理解するまで時間がかかります。
それに加え、振動学を専門とする人向けの内容まで含まれているので、今回は紹介しませんでしたが非常に良い本のため、1度読んでみてわかりやすいと感じた方は使用すると良いと思います。
流体力学 – 流体力学-シンプルにすれば「流れ」がわかる(レベル:初学者向け)
この参考書は、8章構成になっており、
- 流れの基礎事項
- 静止流体の力学
- ベルヌーイの定理
- 運動量理論
- 物体まわりの流れ
など流体力学を学ぶ上で必須の知識がコンパクトにまとめてあります。
流体力学は、個人的には4力学の中でもダントツで理解が難しく、内容も非常に多い学問であるため、基礎からしっかり理解しましょう。
私自身、大学の講義内容が非常に難しくて流体力学を1度嫌いになりましたが、この参考書のおかげで流体力学の面白さに気づいて好きになり、今では流体力学分野の研究をしています。
図を多く使った解説で非常に理解しやすく、計算式を省略せずに公式の導出を行っているため、流体力学の初学者でも十分についていけます。
また、最大の特徴としては、演習問題の解答・解説がHP上で公開されている点です。
参考書によっては、回答が「略」になっていたり、数値だけの答えだったりするため、丁寧な解説は、初学者にとってたいへん役に立つと思います!
こんな方におすすめ
- 流体力学を基礎からわかりやすく網羅的に学びたい
- 流れの様子を想像できるように図を多く使った参考書を探している
- 問題の解説が丁寧な参考書が良い
熱力学 – 例題でわかる工業熱力学(レベル:初学者向け)
この参考書は11章構成となっており、内容としては、
- 熱力学第一法則や熱力学第二法則
- 理想気体の考え方
- 有効エネルギー
- ガスサイクルや蒸気タービンサイクル
など工業熱力学で重要な内容が網羅的に掲載されています。
熱力学を学ぶ上での注意点として、理学部向けの熱力学と工学部向けの工業熱力学があるので、参考書を選ぶ際は気をつけてください!
一部の理学部向けの参考書でも、工業熱力学を学ぶ上で大切な考え方を習得できる本もありますが、基本的に院試対策では必要ないと思います。
特徴としては、参考書では珍しくフルカラーなので、わかりやすいです。
また、タイトルにもある通り、各章に例題が多く載っており、問題演習を行いながら学べるため、実践的な力が身につきます。
こんな方におすすめ
- 工業熱力学を1から網羅的に学習したい
- 問題演習を行いながら、実践的な内容を学びたい
私は、上記の参考書を利用していましたが、復習の際に「熱力学(JSMEシリーズ)」を利用することもあったので、どちらか1冊を持っておくことをおすすめします。
伝熱工学に関しても、「伝熱工学(JSMEシリーズ)」が図を用いた説明が多く、わかりやすかったので、院試対策には十分だと思います。
材料力学 –材料力学(JSMEテキストシリーズ)(レベル:初学者向け)
院試の材料力学は問題パターンが少ないため、ぜひ解放を覚えて高得点を目指したい科目です。
この参考書は、11章構成で、
- 応力とひずみ
- 引張・圧縮
- はりの曲げ
- 軸のねじり
- 柱の座屈
など材料力学で必要となる知識を初歩から学べます。
この参考書は、機械系の学生なら1度は聞いたことがあると思いますが、JSMEシリーズの1冊です。
JSMEシリーズは教科によって分かりやすさが変わりますが、材料力学、熱力学、伝熱工学あたりは分かりやすかったのでおすすめです。
特徴としては、このシリーズが機械系学部生に向けた参考書なので、材料力学が何もわからない人でも基礎からしっかり学べます。
こんな方におすすめ
- 材料力学を1から網羅的に学習したい
- JSMEテキストシリーズを使いたい
制御工学 – はじめての制御工学(レベル:初学者向け)
制御工学は、大学で初めて学ぶので理解しにくい科目ですが、本書は丁寧な解説がされている点と重要なポイントがまとめられている点で優れており、人気の1冊となっています。
全部で14章構成になっており、
- 制御の基礎知識
- 伝達関数
- システムの応用・安定性
- PID制御
- フィードバック制御
- ボード線図
- ナイキスト安定判別
など古典制御を学ぶ上で必要な知識がわかりやすく紹介されています。
例題や演習問題に解答・解説が載っているので独学でも挫折することなく、古典制御を学べます。
こんな方におすすめ
- 古典制御をわかりやすい参考書で網羅的に学びたい
- 解答・解説が丁寧な参考書を探している
一部の院試で現代制御が必要になる場合もあるので、必要になれば、同じシリーズの「はじめての現代制御理論」がおすすめです。
問題演習 – 機械系大学院への四力・制御問題精選(レベル:上級者向け)
これまで紹介してきた参考書を一通り終えた方は、「機械系大学院への四力問題精選」で問題演習をしましょう。
この参考書は、機械系院試のバイブルとして人気があり、各大学院の過去問題が掲載されています。
旧帝大+東工大の過去問がほとんどなので、難易度は非常に高いと思います。
しかし、この参考書を取り組むことで、現在足りていない知識の確認や問題のアプローチの仕方が分かると思うので、ぜひ取り組んでいただきたい問題集になります。
まとめ
今回は、私が実際に使用して良かった機械系の大学院入試の参考書について紹介しました。
大学院対策における合否の分かれ目は、専門科目の対策にどれだけ時間を充てられるかです。
今回の記事をぜひ参考書選びに活用してください!
- 機械力学
考える力学
機械力学
振動工学の基礎 - 流体力学
流体力学-シンプルにすれば「流れ」がわかる - 熱力学
例題でわかる工業熱力学 - 材料力学
材料力学(JSMEテキストシリーズ) - 制御工学
はじめての制御工学 - 問題演習
機械系大学院への四力・制御問題精選