心理学には、基礎心理学と応用心理学があります。
基礎心理学は主に「心の働き」を捉えようとするものであり、実験・調査など様々な方法を用いて新しい理論を生み出す学問です。
一方で応用心理学は、基礎心理学によって見出された理論をカウンセリングや指導などの方法を用いて、一般の人を支援するための学問です。
今回は、心理系院生の私が専門とする基礎心理学の中でもつまづきやすい、
- 認知心理学
- 生理心理学
- 計量心理学
この3つの勉強法についてご紹介します。
基礎心理学にはどんな分野があるの?
先ほど述べたように、心理学は基礎心理学と応用心理学に大別されます。基礎心理学の分野としては、
- 認知心理学
- 生理心理学
- 発達心理学
- 異常心理学
- 人格心理学
- 比較心理学
- 社会心理学
- 計量心理学
などがあります!
たくさんありますが、これでも全部ではありません。メジャーなものだけ挙げても、これだけ種類があります。
この中でも、初学者がつまずきやすい分野が「認知心理学」と「生理心理学」、そして「計量心理学」です。
認知心理学
認知心理学は、人間の高次脳機能(情報処理や認知活動)について、心理学の観点から捉える分野です。
例を挙げると、知覚(五感)・記憶・思考・意思決定・判断などの脳活動が対象です。
生理心理学
生理心理学は、知覚(五感)・記憶・思考・意思決定・判断のような脳活動について、脳のどの部位やネットワークが関連しているのかを研究します。
fMRI(機能的磁気共鳴画像法)などを使い、人間が何らかの活動を行っている際に活動・抑制する部位やネットワークを探ります。
どちらも脳の活動に焦点を当てているため、これでもかというくらい専門用語が出てきます。
前頭葉とか…扁桃体とか…島皮質とか…。
個人的には認知・生理心理学系の専門用語はかっこよくて好きなのですが(笑)
周りを見ているとやはり、つまずきやすいポイントの様子。
普段は脳のどの部位がどうとか考えて生活してませんしね。馴染みがなく、難しいと感じるようです。
計量心理学
計量心理学も、初学者がつまずきやすいポイントです。上記二つとは違った意味の難しさがあります。
計量心理学とは、人間の心を定量的に捉える≒心理量を測定して、人間の心の在り方や行動を観察する分野です。
ものすごくざっくり言うと、研究法(心理実験・調査の手法)や統計を勉強します。
大学で心理学部に入る人は文系出身が多く、数学にはあまり縁のない人生を送ってきているので、いきなり数式とかがドーン!と出てきて困惑するわけですね。
「Σ(シグマ)=和」すらほとんどの人は忘れた状態で入学します(私もそう)。
さて、基礎心理学の勉強法について、今回は「認知心理学」「生理心理学」「計量心理学」に絞って、私なりの勉強法をご紹介します。
基礎心理学の勉強法
認知心理学の勉強法
認知心理学は専門用語が多い点と、一つ一つの領域に関する情報が細かい点が理解を難しくしています。
例えば知覚で言えば、
【知覚】
→五感(視覚・嗅覚・味覚・聴覚・体性感覚)→視覚(色・明るさ)→色(S錐体・M錐体・L錐体)
と、一つの領域をどんどんクローズアップできるので、情報量が多くなって頭が混乱してしまいます。
情報が多いので、認知心理学は以下の2つのポイントを意識して勉強しましょう。
- 領域ごとに図解して情報を整理する
- 日常の事柄と関連づけて覚えるようにする
上記では、矢印を用いて【知覚→五感→視覚…】と例を挙げました。
これを「一つの図としてまとめる」ことで、それぞれの情報を整理してあげます。
こんな感じです。
専門用語に色もつけて覚えると、先ほど挙げた「日常の事柄と関連づけて覚える」につながります。
左下のS錐体というのは、短い波長(450-500 nm)の光が網膜に当たることで興奮し、「青」を知覚するんです。
隣の2つも同じ仕組みで、それぞれ興奮すると「緑」と「赤」を知覚します。
そんな覚え方嫌だ!と思った方、本当に便利なのでそこはいったん我慢してください…!
この方法は、他の例でもいけますよ。
記憶だったら、自転車乗ってるときに「いま手続き記憶から情報検索してるな…」とか。
※手続き記憶:長期記憶の一種で、同じ経験を繰り返すことで半永久的に獲得される記憶。どうやって記憶したかは忘却され、技能だけが残る。自転車の乗り方・水泳・楽器の演奏などが当てはまる。
・認知心理学を体系的に学べる教科書
メモリーツリーという勉強法も効果的だと思います!
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生理心理学の勉強法
生理心理学は全力で暗記しましょう。
生理心理学は認知心理学より専門用語が頻出する上、日常の事柄と関連づけて覚えるのにも限界があります。
部屋の中でゴキブリを見つけて、
「いま恐怖の情報処理を行う扁桃体が活動してる!!」
くらいなら考える余裕があるかもしれません。
しかし、「扁桃体が他の脳部位にネットワークを繋げてどんな生理反応を起こしているか」までは考える暇がありません。
(復習としてなら、当時のことを思い出して情報を整理するのは可能かもしれませんが)
正直に言うと、ほぼ暗記で覚えました。
一つの教科書を繰り返し読み、試験や研究の際に必要な部分を参照することで、少しずつ理解を深めていきました。
情報や領域が細かすぎてリストにしても実感が湧きにくいです。
強いて言うなら、図やイラストがたくさん使われている教科書を選んで、「脳や身体の図」で覚えると理解しやすくなります。
・図解が多くて初学者向け
・基礎は学んでいる方へおすすめの一冊
計量心理学の勉強法
計量心理学は、暗記する生理心理学とは逆で、経験して覚えるのが一番です。
統計の教科書を読んで、数式を覚えたり、いつ使うか知ることも大切なのですが、データを手元に置いて、統計ソフトを動かすことで実践的に学べます。
教科書もたくさんあるんですが、データを解析するための統計ソフトにも色々なものがあります。
代表的なものを挙げると、SPSS・HAD・Rの3つです。
SPSSは個人でダウンロードするには高価なので、HADかRがおすすめです。
HADは関西学院大学の清水裕士先生によって作成されました。
エクセルを使って多変量解析(因子分析や分散分析など)を行いたいのであれば、HADで十分だと思います。
GUIベースなので直感的に操作できるのが魅力的です。
Rはもっと本格的に統計を学びたい!という方や、ベイズ統計をやってみたい!という方に向いています。
大規模なデータを用いて統計を行う場合もRがおすすめですね。
こちらはCUIベースなので、一からやるにはとっつきにくさがあります。その分、自由度が高いのが魅力です。
・HADを学ぶならこの教科書!
・Rを学ぶならこの教科書!
使い方がある程度わかったら、次は数式の載った教科書を参照して、それぞれの統計に対する理解を深めていきましょう!
以下の記事にも統計のおすすめ参考書を紹介しています。
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心理学は奥が深いので、1つ1つ丁寧に勉強していこう
今回は基礎心理学の中から、認知心理学・生理心理学・計量心理学の勉強法をご紹介させていただきました!
最後に簡単にまとめます!
【認知心理学】
- 領域ごとに図解して情報を整理する
- 日常の事柄と関連づけて覚えるようにする
【生理心理学】
- 図を参照して頭の中でマップを作りながら、脳の部位や神経回路を暗記する
【計量心理学】
- 教科書の例題データを用いて実践的に勉強する
- 使い方が理解できたら、数式が載った本格的な教科書を読んで理解を深める
この記事が、基礎心理学を勉強中の方に少しでも役立てていれば幸いです。